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This article was translated by the Japan Internal Audit Research Institute (JIARF). We would like to thank JIARF for their help with the translation.

「効果的なAIの創造に成功すれば、それは私たちの文明史上最大の出来事となるかもしれません。あるいは最悪の出来事になるかもしれませんが、どちらになるか私たちにはまったく分かりません。 したがって、私たちはAIにいつまでも助けてもらえるのか、無視されて脇に追いやられるのか、ことによるとAIに滅ぼされるのか、いずれになるかを知ることはできません。」 ― スティーブン・ホーキング、理論物理学者 

生成型人工知能(生成AI) は、大きな変革と重大な結果をもたらします。ゴールドマン・サックスは2023年3月、AIによって約3億の仕事が奪われるか、あるいは仕事の価値が下げられてしてしまうことになる、と予測しました。AIと生成AIが会計専門職にとって重要な含意(インプリケーション)を有していることは明らかです。   私は最近、国際会計士連盟(International Federation of Accountants:IFAC)の EdExchangeのウェビナーで次の3点について報告をしました。第1に、AIの出現とその能力、第2に、AIから大きな便益を享受できる反面、気を付けなければならない大きなリスクもあるということで、交錯した祝福のように思われること、第3に、これらすべてが会計専門職に対して、とりわけ倫理の観点からどのように関係しているか、についてです。

AI はすでに会計の景観を変えつつある 

AI は効率性と正確性をもたらしますが、会計士は倫理的な課題を乗り越え、新たな役割に適応しなければなりません。会計の未来は人間の専門能力と AI の能力が交差するところにあることは、間違いありません。明らかに、AI は、データ入力、照合および財務報告などの定型的な業務を自動化します。ロボットによるプロセス・オートメーション(RPA)と組み合わせれば、人為的ミスの削減、正確な財務諸表の確保、監査プロセスの合理化、効率性の向上および高度のリスク評価、といった成果は、あらゆる面で想像を絶するような最高の水準となるでしょう。AI が定型的な業務を適切に処理することで、会計士が戦略分析、リスク評価、顧客へのアドバイスに集中できるようになる、という役割の転換が想定されます。AIはまた、財務取引、不正検知およびコンプライアンスをリアルタイムで監視することを可能にするので、会計士は意思決定を強化するために AI と効果的に連携することができます。 伝説的な SF 作家のアーサー・C・クラークはかつて、「十分に進歩したテクノロジーは魔法と区別がつかない」と述べました。ニューヨークでは、「より速く、より良く、より安く」はどれも素晴らしいことですが、現実には、2 つしか得られず、一度に3つすべてを得ることはできない、と言われています。つまり、より速く、より良いことが安くなることはなく、より良く、安いことがより速くなることはなく、より安く、より速いことがより良いことにはなりません。しかし、AI はこの想定された障壁を乗り越えたようです。今では、3つの特恵を同時に得ることができます。クラーク氏の定式化によれば、それは「魔法」に相当します。これまで複雑だった多くの業務が、AI によって「より速く、より良く、より安く」完了できるようになりました。このような素晴らしい能力は、まさに魔法にほかなりません。 同時に、AI モデルは学習データからバイアスを継承してしまう可能性がとても高く、アルゴリズムのバイアスは重大な欠陥となります (O’Neil、2016 を参照)。より懸念されるのは、いわゆる「AI 幻覚」です。それは、AI の生成した結果がまったくの空想であり、完全に作り話である可能性がある、ということです。さらに、この現象に気付いていない人は、AI を「ハロー効果」を持つものとして扱い、AI に全面的に依存してしまう傾向があります。こうした新興テクノロジーへの過度の依存は自動化バイアスと呼ばれ、専門職としての懐疑心をさらに蝕むことになり、世界中の規制当局が懸念事項として指摘している点です。会計士は、AI システムの予測が透明かつ公正であることを保証する必要があります。AIシステムが機密性のある重要な財務データを扱う場合、プライバシー、機密性、セキュリティを確保することは極めて重要です。同様に、会計士は AI ツールを使用する際に顧客情報を保護しなければならず、AIの使用が監査人の独立性に影響を与える可能性さえあります。

AI の広範な利用に伴う倫理的問題の探究 

新興のテクノロジーに係わる数々の倫理的問題を理解することは、極めて重要です。機械知能と新興のテクノロジーは、その定義からして、人間のような感性を備えていないので、報 酬や罰の対象とはならず、したがって、意味のある責任や説明責任を担わせることはできないという事実を、私たちは認識する必要があります。また、私たちは現在の専門職の倫理規程の根本的な限界を早急に評定する必要もあります。なぜならば、現在の専門職の倫理規程は、人間である専門家のみを対象にしており、人間と機械の相互作用と自律システムを考慮していないからです。人間と機械の相互作用と自律システムは複雑な倫理的シナリオを生み出す可能性がありますが、それらに対する基準やガイドラインは現在のところ存在していません。 国際会計士倫理基準審議会(International Ethics Standards Board for Accountants)が刊行した「職業会計士のための国際倫理規程(独立性基準を含む)(The International Code of Ethics for Professional Accountants(Including Independence Standards))」には、誠実性、客観性、職業的専門家としての能力と正当な注意、守秘義務並びに職業的専門家としての行動という基本原則が含まれています。しかし、これらすべての原則は、人間の特性や特徴に基づき、それらを参照しているので、コンピュータや機械知能に当てはまるとは思われません。とはいえ、ブロックチェーンやスマート・コントラクト、そして最近ではChatGPTなどの生成AIツールなどの新興テクノロジーの急速な進歩に伴って、人間と機械の相互作用から生じる倫理的問題についての検討が迫られています。とりわけ、これらがアルゴリズムやコードを使用して自動化されている場合には、急がねばなりません。 倫理的な問題は、倫理的義務に関する微妙で複雑な意味の解釈を含んでおり、それらの解釈は人間によって行われなければなりません。感覚と知覚の能力に欠けたテクノロジーにはまったくそのような分析ができないからです。その意図された運用が弁護士にも会計士にも読みとることも、理解することもできないとしたら、誰がスマート・コントラクトを信用するでしょうか。スマート・コントラクトは、コンピュータのプログラミング・コードで書かれているため、そのような専門家や他のビジネスパーソンには理解できません。 ChatGPT タイプのツールは AI の幻覚に悩まされることが知られているので、実装されたスマート・コントラクトと倫理的な含意(インプリケーション)を有するAI ツールを使用することで生じる倫理的なシナリオを理解して分析するためのフレームワークが必要です。大きな難点は、こうした取り決めが裁判制度を通じて解決できないため、透明性が欠如し、したがって説明責任が果たされないことです。 

監査は、いわば「関係性ビジネス」であり、信頼はクライアントと監査人の相互作用にとって岩盤のような基礎です 

信頼を高める行動に加えて信頼を損なう行動を説明するフレームワークを開発する必要があります。人間がテクノロジーによって補完され、さらなるテクノロジーによって取って代わられる自律システムによって補完される世界にとって、刷新された倫理規程を開発するために必要なものは、まさにそのようなフレームワークなのではないでしょうか。 

結語

2016 年に正式に英語の一部となった、比較的新しいインドの言葉に注目していただきたい。"AIYO!"は、特に南インド(私の母国語であるタミル語を含む)で、悲しみ、驚き、恐怖、幸福など、さまざまな感情を表現するときに使われます(ケンブリッジ英語辞典、2023年)。 「AI」を含むこの新しい英語の言葉「AIYO」を使い、以下の五行戯詩(リメリック)で私は報告を締めくくりました。  AI の潜在能力は大きくて広い しかし、そのリスクは隠せない 偏ったデータから悪賢い機械まで 危険は現実か、現実のようか アイヨ!陥穽を避けるには、慎重に進まねばならない ―シュリダハール・ラマムーティ、デイトン大学 本稿は、国際会計士連盟(IFAC)と国際会計教育研究学会 (IAAER) が主催した最近のイベントにおける報告に基づいています。デイトン大学はIAAERの大学会員です。 著者は、本稿の初期のバージョンに対して編集上の助言を下さったブルース・ヴィヴィアン、メーガン・ハートマン、そしてリンダ・ビーク博士に謝意を表します。 さらに詳しくは、以下のラマムーティ博士のEdExchange ビデオ・プレゼンテーションをご覧下さい。 https://youtu.be/rWf7RcrasIs 

 

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Sridhar Ramamoorti

シュリダハール・ラマムーティ博士の経歴 ACA, CPA/CITP/CFF/CGMA, CIA, CFE, CFSA, CGAP, CGFM, CRMA, CRP, MAFF デイトン大学会計学准教授であり、2020年1 月からデイトン大学ハンレー・サステナビリティ研究所のサステナビリティ研究員を務める。それ以前に、ジョージア州ケネソー州立大学とイリノイ州アーバナ・シャンペーンのイリノイ大学で会計学教員を務めた。 ラマムーティ博士は、学術、監査、コンサルティングの分野で 35 年以上の経験を有し、学術と実務の両方のバックグラウンドを持つ。ボンベイ大学で商学士の学位を、オハイオ州立大学で修士号と博士号を取得した。キャリアの初期には、アンダーセン・ワールドワイドのプリンシパル、EYのサーベンス・オクスリー法の全国アドバイザー、グラント・ソーントンLLP のコーポレート・ガバナンス・パートナー、インフォギックス4 社のプリンシパルを歴任し、後にコンサルタントを務めた。 ラマムーティ博士は、『The Audit Committee Handbook』( Wiley、第 5 版、2010 年)、FBI アカデミーで公刊された『A.B.C’s of Behavioral Forensics』( Wiley、2013 年)、内部監査人協会が発刊し、フラ(本稿の原文はこちらからご覧になれます。 ンス語、スペイン語、日本語に翻訳された教科書『Internal Auditing: Assurance and Advisory Services』など、60 を超える論文や記事および 15 冊の書籍やモノグラフの共著者である。 この20年間に、同博士は16カ国で開催されたカンファレンスで研究発表と講演を行ってきた。 

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Sridhar Ramamoorti
Sridhar Ramamoorti

Dr. Sridhar Ramamoorti, ACA, CPA/CITP/CFF/CGMA, CIA, CFE, CFSA, CGAP, CGFM, CRMA, CRP, MAFF, is an Associate Professor of Accounting at the University of Dayton, and from January 2020, a sustainability Scholar affiliated with the UD Hanley Sustainability Institute. Previously he was on the accounting faculties of Kennesaw State University, Georgia, and the University of Illinois in Urbana-Champaign, Illinois.

Dr. Ramamoorti has a blended academic-practitioner background with over 35 years of experience in academia, auditing, and consulting. A BComm. graduate of Bombay University, he holds Masters and Ph.D. degrees from The Ohio State University. Earlier in his career, he was a principal with Andersen Worldwide, was National EY Sarbanes Oxley Advisor, a corporate governance partner with Grant Thornton LLP, and a principal and later, consultant, with Infogix, Inc.

Dr. Ramamoorti is co-author of over 60 papers and articles and 15 books and monographs, including The Audit Committee Handbook (Wiley, 5th ed., 2010), A.B.C’s of Behavioral Forensics (Wiley, 2013) that has been presented to the FBI Academy, and the textbook, Internal Auditing: Assurance and Advisory Services published by the Institute of Internal Auditors, with translations in French, Spanish, and Japanese. In the last two decades, he has presented his work and spoken at conferences in 16 countries.